俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「僕は真剣に涼野さんを想っています。いつもひたむきに機体の整備にあたる真剣な眼差し、そして丁寧な仕事ぶりに心から惹かれたんです。どうか信用していただき、彼女とふたりで話をさせてもらえませんか?」
言い切ると同時に、深々と頭を下げる深澄さん。一見神妙な態度に見えるが、私は見逃さなかった。頭を下げた瞬間、彼の右側の口角が微かに吊り上げられたことを。
この人、まさか笑ってる……?
「だとさ。どうする?」
エリートパイロットが自分たちに深々頭を下げている状況なんて初めてなのだろう。
困惑した様子の最上さんが、石狩さんと信濃さんに判断を仰ぐ。
「ま、まぁそこまで言うなら」
「姫は王子が迎えに来る運命。これほどの相手に真剣に想われているのなら仕方がないでしょう」
石狩さんと信濃さんが目を見合わせてそう言うと、最上さんは顎髭を撫でてひとつため息をこぼし、私を見る。
「じゃ、俺たちは帰るわ」
「えっ……」
そんなにすぐ深澄さんを信用していいの?
私を姫だと褒めそやすわりに、セキュリティ甘くない?
急に心細くなる私をよそに、三人はさっさと帰り支度を整えて席を立つ。