俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

「邪魔者は消えっからよ、じゃあな」
「処女喪失、おめでとうございます」
「いや、ちょっと……」

　それぞれ微妙にズレたことを言い残してこの場を去ろうとする先輩を引き留めようと伸ばした手を、深澄さんがガシッと掴む。

　そしてソファの上にポンと下ろすと、先輩たちがだいぶ離れた位置に移動してから口を開いた。

「口説くつもりだと言っただろ。逃げんな」

　鋭く細められた目に囚われたように、私は身動きが取れなくなった。

　なんで深澄さんが私なんかに興味を示しているのかは未だにわからないけれど、反抗するのは得策ではなさそうだ。

「……わ、わかりました。逃げません」
「それでいい。ずっとお前と話したかったんだよ、涼野」
「えっ？」

　聞き返した私を無視して、深澄さんは店員を呼んでテーブルを片付けさせ、新たにワインを注文する。

　彼は運ばれてきた赤ワインを私の分まで注ぐと、無理やり手に持たせて「乾杯」と言った。

　薄いグラスに唇をあてて軽く傾ける深澄さんの横顔、上下する喉仏。どんな表情も仕草も妙に色気を感じてしまい、気を逸らすようにワインに口をつける。