俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 ……美味しい。

 ワインには詳しくないけれど、さっきまで先輩たちと飲んでいた手頃な価格のものとは香りも味も格段に違う気がした。

「酒、強いんだな。さっきから飲んでいるわりに、顔色が変わらない」
「あっ、はい……。職場の先輩方がみなさん強いので、それに鍛えられたのもあるかもです」

 と言っても、一気飲みなどを強要されたことは一度もない。たまの飲み会に参加して楽しんでいるうちに、みんなのペースに巻き込まれて自然と強くなったのだ。

「ふうん。その中に付き合ってる男は?」
「い、いませんよ!」
「好きな相手も?」
「いないですって。整備の仕事と資格の勉強で手一杯ですし」

 なんでこんな質問攻めに遭うんだろう……。

 しかも、さっき深澄さんが嫌がっていたようなプライベートの質問ばかり。

 私の交友関係なんて知ったところで、深澄さんが得することは一ミリもないのに。

「ところで、さっきの話は本当か? お父さんが整備士を辞めさせたがっているという」
「本当ですけど」
「勉強に集中するために、実家を出たいとも思っているのも?」

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