俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「――あ、おはようございます、最上さん」
翌日の始業前。格納庫に着いてすぐ最上さんの後ろ姿を見つけた私は、いつものように挨拶をした。
振り向いた彼は、「おう」と軽く手を上げて微笑んだ後、なぜか真顔になって固まる。
「どうかしました?」
キョトンとして問いかけると、最上さんは疲れたように息を吐き、なぜかしゃがみ込んでうなだれてしまう。
「最上さん?」
「そりゃどうかするだろ……。告白した相手が、こんなわかりやすくほかの男の気配アピールしながら出勤してきたら」
「ほかの男の気配……あっ!」
私は思い出したように、パッと首筋に手を当てる。
昨日、マンションに帰ってから鏡で確認したけれど、鷹矢さんが残したキスマークは首の前側、ツナギのファスナーを一番上まで上げたとしても隠せない位置にあった。
どうにかしてごまかさなきゃと思ったものの、ひと晩寝たらすっかり忘れていて、なんの対策もせずここまで来てしまった。
どうしよう、恥ずかしすぎる……!
だらだらと冷や汗をかきながらなんとかして隠す方法はないかと考えていると、ゆっくり腰を上げた最上さんが私の目の前に立つ。
見上げたその瞳は、笑っているけれど少し切なそうだった。