俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 鷹矢さんは八月の終わりに無事退院し、マンションに帰ってきた。

 入院中の検査でもとくに異常は見つからず、心膜炎の治療は自宅での服薬のみに切り替わった。激しい運動などはまだ禁止だけれど、日常生活に制限はないそうだ。

「あぁ~……やっと帰ってこれた」
「お帰りなさい、鷹矢さん」

 昼頃に病院から一緒に帰ってくるなり、鷹矢さんはリビングのソファにドカッと腰かけた。

 久しぶりの自宅に心からホッとした様子で、背もたれに深く身を預けて目を閉じている。

 私は帰る途中に買ってきたお弁当をダイニングに並べ、キッチンでお茶を淹れながら、この家の景色に再び彼が戻ってきた幸せに浸った。

 単に仕事ですれ違っているのと、彼の入院で完全にこの部屋にひとりぼっちだったのとはやっぱり寂しさが段違いだった。

 鷹矢さんがここにいてくれる。それだけでいい。他にはなにもいらない。

「……ここから、再スタートだな」

 鷹矢さんがボソッと呟き、ソファから立ち上がる。

 そしてキッチンの私のもとに来ると、突然背後からギュッと抱きついてきた。

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