俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 私のイメージしている結婚とは違うようだけれど、深澄さんの言い分もわからないでもなかった。

 極上の容姿にパイロットの肩書き、機長昇格間近という将来性もある深澄さんだから、モテるのは当然。羨ましく思う人もいるのだろうが、彼にとっては煩わしいだけなのだろう。 

 パイロットの仕事は整備士以上に過酷だろうし、鼻の下を伸ばしている暇なんてないのかもしれない。航空業界嫌いの父に構っている暇がない私と同じように。

「つまり、誰でもいいから偽りの妻が必要ということですね」
「そうは言ってないだろ。今日ここに居合わせたのは偶然だが、俺はお前の丁寧な仕事ぶりを知っている。飛行機を心から大切に思っていることも。だから、CAのうちの誰かじゃなく、涼野を選んだ。俺ほどのパイロットに認められたんだからもっと喜べ」
「俺ほどって……」

 偉そうな態度に少し呆れつつも、嬉しさを隠し切れず口元が緩みそうになった。

 私なんてまだまだひよっこなのに、それこそ〝深澄さんほどの〟パイロットに仕事ぶりを認められていたなんて光栄すぎる。

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