俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「残念。空港や飛行機は見えませんね」
「いつも飽きるほど見てるだろうが」
「いくら見ても飽きないから、整備士なんてやってるんですよ」
「ははっ、なるほど。俺もそうかもな。お互い、好きじゃなきゃやってられない仕事だ」
深澄さんは手すりに背を預け、愉快そうに笑う。それから、開けたままの窓から室内を眺めて言った。
「お前の部屋、東側の洋室でいいだろ?」
「はい、私はどこでも」
「じゃ、決まりだ。でもまだベッドがないから、今夜は俺のベッドで寝ろよ」
軽い調子でそう言われ、目をぱちくりさせる。
ベッドを譲ってくれるということだろうか。さすがにそれは申し訳ない。
「でも、そうしたら深澄さんはどこで寝るんですか?」
「自分のベッドで寝るつもりだけど」
「えっ?」
とんちを出題されたかのごとくわけがわからず、眉根を寄せる。
深澄さんはふっと鼻から息を漏らして笑い、なぜか私の背後に回って手すりを握る私の手に自分の手を重ねた。
後ろから包み込まれるような体勢にドキンと胸が鳴り、じわじわ頬が火照っていく。
「お前のお父さんって航空業界嫌いなんだよな。だったら、パイロットとの結婚なんてきっと反対される。その辺、どう説得しようとか考えてるのか?」
どうして急に父の話をするのだろう。
密着されているドキドキで思考がうまく働かないが、なんとか言葉を探す。