俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「ど、どうって……。私ももう大人です。父親に反対されたからって結婚できないわけじゃないですし、むしろ突き放すためにもちょうどいいかなって」
「ふうん。いっそ同じベッドに寝て既成事実を作った方がいいかとも思ったが、その必要はないってことか。つまらないな」
深澄さんは言いながら、手すりの上で重なり合う私の手を弄んだ。
軽くさすったり、指を絡めたり、ギュッと握ったり……それだけでも恥ずかしいのに、彼の口から『既成事実』なんて単語が飛び出したから、私の心臓はますます早鐘を打った。
深澄さんは冗談のつもりなのだろうけれど、こっちは男性に免疫がないのだから、過剰なスキンシップはやめてほしい。
「なにがつまらないんですか……! 既成事実なんて、必要ありませんからね!」
「わかった、俺はソファで寝るよ。これぐらいで赤くなっちゃって、かわいいヤツ」
甘ったるい声で言った深澄さんは、最後に私の耳にふぅっと生暖かい息を吹きかける。
思わず「ひゃぁ!」と変な声を出した私に構わず、深澄さんはクスクス笑いながら部屋に戻っていった。