俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
尊敬の対象だった〝エリートパイロットの深澄さん〟とあまりにかけ離れた姿に頭が混乱する。
この人のそばにいて、私、成長できる……よね?
彼との結婚は名案だと思えていたはずが、また新たな問題が発生したような気もして、私はバルコニーに突っ立ったままなかなか動けなかった。
その後シャワーを借りることになり、広々としたパウダールームに移動した。
バスルームに繋がるドアはガラス張りで、バスタブの正面には大きな壁掛けのテレビ。明るくなりすぎない照明がムーディーで、やけに落ち着かない。
行ったことはないけど、高級ホテルのバスルームはこんな感じなんだろうか。
整備の仕事で汗と油にまみれた体をこんなきれいな所で洗うなんて、気が引ける。
やたら接近してくる深澄さんにも『オイルくさいヤツ』って思われていたかな。
「……ま、別にいいけど」
誰にともなくそう呟くと、私は落ち着かないバスルームで自分の体を洗い始めた。
髪を乾かしてからリビングに戻ったら、ブラックレザーのソファで寛いでいた深澄さんが私の姿を上から下まで舐めるように観察した。