俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

「いえ、まだ……どう連絡するのが正解かもわからないですし、飲み会だとは言ってあるので、女性の同僚の家で宅飲みして寝ちゃったってことにしようかと」
「嘘つきだな、男の家に泊まるくせに」

 そう言いつつ、にやりと笑う深澄さん。

 絶対に面白がっている。

「深澄さんだって共犯者じゃないですか」
「……だな。俺って悪いヤツ?」
「今はちょっとそう見えます。……仕事の時はカッコいいのに」

 後半は聞こえるか聞こえないかの声で、ボソッと呟いた。

 私たちが整備した機体を安全に飛ばしてくれるパイロットは、皆さんカッコいい。

 その中でも飛び抜けてエリートの深澄さんは、太陽のように眩しくて簡単には近づけない存在だと思っていた。なのにまさか、こんないたずらっ子のような一面もあったなんて。

「今、カッコいいって言ったか?」
「い、言った……ような言ってないような」

 わざわざ指摘されると照れくさくて、しどろもどろになりながらごまかす。

 さすがは普段から五感を研ぎ澄ませているパイロット。こんな時でも地獄耳だ。

「そうか、涼野は仕事中の俺がお好みか」
「お好み……?」

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