俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
独り言のように呟いた彼に、首を傾げる。
「今なら仕事の話、なんでも答えてやるよ。お前限定だ」
「えっ、いいんですか?」
どうやら、深澄さんが仕事の話をしてくれる気になったらしい。
聞きたい話がいっぱいある。なににしよう。
「今まで見た中で一番綺麗だった夜景の話がいいか? それとも空の上から見た初日の出の話がいいか? 台風の目を突っ切った時の話でも――」
いくつか例を挙げる彼の声にかぶせるように、私は言った。
「私、同時並行進入のこと、聞きたいです! 下から見てる分には、ふたつの機体が並んで着陸する光景が圧巻ですごいって思うんですけど、あれって怖くないんですか?」
同時並行進入とは、空港の発着能力を高めるための、滑走路の運用方式のひとつ。文字通り、ふたつの飛行機が並んで滑走路に入ってくる。
羽田だと、第一ターミナル側のA滑走路と第二ターミナル側のC滑走路をめがけ、ほぼ真横に並んだ飛行機が同じタイミングで着陸するのを見ることができる。