俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 もちろん、ふたつの機体が接近しないよう管制官が高精度のレーダーで監視しているけれど、操縦しているパイロットの感覚としては怖くないのか、ずっと気になっていたのだ。

 興味津々の眼差しで深澄さんを見下ろすと、彼はふっと息を漏らして笑う。

「……同時並行進入と来たか」
「ダ、ダメですか?」
「いや、なんでも答えるって言ったのはこっちだ。そんな話でよければいくらでも聞かせてやるよ。色気もムードも演出できないのが残念だけど」

 深澄さんはそう言うと、「よっ」と体を起こした。パイロットの貴重な話が聞けるとあって、私の背筋も自然と伸びる。

「進入前に機長と入念なランディング・ブリーフィングをしてからの着陸だし、万が一どちらかの機体が不可侵区域に入ってしまった場合は、ただちに管制官から回避の指示が出る。だから怖くはないよ。もともと、着陸は得意だしな」
「横風が吹いていても?」
「強い横風なら風上側に機首を振って、機体が流されないようにする。降下角と対気速度を維持しながら、メインギアのタッチダウン。ある程度減速したところで優しくノーズギアを接地させてやれば、衝撃も少ない」

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