俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「あら、お疲れ様です深澄さん。今日はオフだったんじゃ？」
集団の先頭にいた、三十代前半と思われるＣＡが足を止め、彼に挨拶する。
スカイイーストのトレードカラーである黄色のスカーフに、タイトな黒のスーツ。きっちりまとめた髪に華やかなメイク。
彼女と同じ性別だというのがおこがましく感じるほど、その姿は美しい。
「高城、お疲れ。俺は休みだが、彼女が夜勤だったから迎えに来たんだ。なぁ光里」
声をかけてきた女性は高城さんと言うらしい。深澄さんがくいっと私の手を引っ張り、甘い声を出す。
私に話を振らないで……。
内心そう思いつつ、高城さんにおずおず目を合わせる。
「ど、どうも、お疲れ様です……」
顔を上げた時、高城さんは笑顔こそ崩さないものの、口の端を一瞬ひくっと震わせたような気がした。
これ以上彼女たちを刺激しないように、さっさと帰りましょうよ……。
声に出さずに訴えても届くわけがないが、思わず心の中で叫ぶ。
「本当だったんですね、深澄さんがちょっと風変わりな女性とお付き合いしてるって」
高城さんは人を小ばかにするように鼻を鳴らしてそう言った。
後ろに従う若いＣＡたちも、クスクス忍び笑いをする。
