俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 そう口にしながら、チクッと胸が痛んだ。自分を卑下したくなんてないのに、深澄さんの前ではどうしても女性らしくない自分が欠陥品のように思える。

 私、いつからこんなネガティブ思考になったの?

 思わず太腿の上で握った手にギュッと力を籠めたら、運転席から身を乗り出してきた深澄さんの影に覆われる。

 目線を上げると、深澄さんの鋭い眼差しに射貫かれた。

 彼の長い指先が、トン、と唇に触れる。

「そんなもん、キスしたい唇がここにしかないからに決まってるだろ。俺を満たせるのはお前だけなんだよ、光里」

 恋人に囁くようなとろける甘い言葉が口からサラッと出る辺り、深澄さんはやっぱり経験値が高いのだろう。

 それがわかっているのに簡単にドキドキしてしまう私とは、やっぱり釣り合わなすぎる。

「そんな風に言われても、信じられるわけ……」
「素直じゃないヤツ。ま、お前が信じようが信じまいが関係ない。俺はこれからもお前にキスをするし、いつかそれ以上のことも求める」
「えっ……?」

 それ以上、という意味深な言葉にどきりとする。愛のない契約結婚にはあり得ないはずの、愛を確かめ合う行為を想像してしまったからだ。

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