ひと夏のキセキ
エレベーターはあっという間に最上階である4階に到着した。


そして半ば強引に案内されたのは、フロアの突き当りにある空き教室。


引き戸の前まで来てしまったけど、この中に遥輝がいるんだよね。


どうしよう…どんな顔して会えばいいんだろう。


ガラガラッ!


私の緊張なんてつゆ知らず、葵は勢いよく扉を開けた。


「ちょっ!待っ―」


「ほら!制服姿の絢ちゃんだよーん」


葵に背中を押されながら教室の中に足を踏み入れると、そこは教室とは思えない空間だった。


学習机や椅子は撤去され、床には赤いカーペットが敷いてある。


そして、革のソファが4つと、その中央にガラスのローテーブルが1つ。


二人がけソファがテーブルを挟んで廊下側と窓側に一つずつ向かい合っており、教室前方側と後方側に一人がけソファが向かい合っている。


「うわー!!絢ちゃーーん!!久しぶり!!会いたかった!!」
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