激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


「考えてみれば、ここに越してきてから、こうしてふたりでお茶を飲むのは初めてですね」

「ああ、そうだな。明後日、一泊二日で岡山のほうに出張があるが、それが終われば一旦落ち着く」

「出張……?」

「ああ。後見人との面会があってな。出かけなくてはならないんだ」


 せっかくひとつ屋根の下で暮らし始めたというのに、仕事が立て込み一緒の時間を過ごせないでいる。

 仕方のないことだが、もっと急激に彼女との距離を縮めたい。


「お忙しいだろうなとは予想してましたが、やっぱりかなり大変なお仕事ですね」

「ああ。でも、好きで就いた仕事だから、どんな状況でも満足している」

「それ、なんかわかる気がします」

「そうか。共感してもらえたか」

「はい。私も、たくさんお客様に来ていただいてたとえ忙しくて肩がバキバキに凝っても、常に充実感しかないので」


 そう言った京香は突然ハッと何かに気づいたような顔をし、手にしていたマグカップを置いて俺に体を向ける。


「って、すみません。私の仕事と一緒にしちゃだめですよね! 弁護士さんのお仕事は、私の仕事とは別物ですから」

「そんなことはない。どんな職種だろうと、同じ仕事だ。志を持ってやっているのなら、業種など関係ない」


 京香の顔にほんのり笑みが浮かぶ。どこか嬉しそうな表情を見せられ、思わずじっと見入ってしまった。


「そうですね。志、ちゃんと持ってます」


 強引に始めてしまった関係だけど、こうして少しずつ互いのことを話して距離を縮めていけたら。

 そんなことをぼんやりと思いながら並んだマグカップを手に取った。

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