激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
自室を中心に荷物をまとめ、共用部分も見て回る。
ふらっとキッチンに入ったとき、ふたつ並べて置いてあるマグカップに目が留まった。
ふたつを手に取り、くっつけてダックスフンドの絵柄を眺める。
これを一緒に買いに行ったとき、何度かこれに飲み物を入れて飲んだこと、僅かな間だったけれど、透哉さんと過ごした楽しかった思い出が蘇る。
喉の奥が詰まって涙が浮かびそうになり、大きく息を吸い込んだ。
こんな未来が待っているのなら、こんなお揃いのものなんて買わなければよかったのに。
今になってそんなことを思っても、思い出は簡単に消えたりはしない。
「ありがとう」
話しかけるようにマグカップに言い、そっと元の場所に戻した。