激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
偶然とはいえ、タイムリーすぎて困惑する。
こんなのバレないわけがない。
「いえ、私も今来たばかりです」
法律事務所に出向いた際にいただいた名刺を思い返し、確か名前は香椎さんだったと思い出す。
間違いない。この低く落ち着いた声は耳に残っている。
聞いていて好きな声だなと無意識に感じていたからだ。
「本日はよろしくお願いします。こちら、娘の実乃梨です」
潤子伯母さんに紹介され、再度頭を下げて「お願いします」と丁寧に挨拶をする。
「香椎です。よろしくお願いします」
絶対に気付かれるだろうと諦めかかっていたものの、香椎さんが私を見て何かリアクションを取ることもなく、逆に首を傾げたくなる。
もしかしたら、気付いているのは私のほうだけで、彼は私を覚えてもいないのかもしれない。
そうだ、きっとそうに違いない。
香椎さんにとっては、事務所を訪れた依頼人のひとりなんていちいち覚えているはずもない。
まして、契約をしたわけでもないのだから。