激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
営業終了の時刻、二十時を回り、ディライト店内はすでに飲食客で賑わいを見せている。
ディライトの営業は十八時から。
私が最後のお客様を施術し始めるくらいの時間だ。
「京香ちゃん、どうした? 渋い顔して」
接客用の椅子に掛け、デスクでスマートフォンをいじっている私へ、オーナーの二宮丈さんがカウンター越しに声をかけてくる。
「あ……渋い顔になってますか?」
「うん。声掛けようかと思うくらい」
そう言われて、慌てて笑顔をつくってみせた。
「なんでもないですよ。ちょっとニュース記事読んでただけです」
「嘘だな。京香ちゃん、嘘つくの下手だぞ?」
丈さんは私の嘘を速攻で見抜く。顔のちょっとした筋肉の動きでも見てわかるのだろうかと疑うくらいだ。
オーナーの丈さんは、私よりもひと回り以上年上の大人な男性。
肩の上で揺れる長髪と無精ひげがワイルドな印象で、趣味はサーフィンというから納得がいく。
ご自宅は湘南にあるらしく、休日は専ら海に出ているそうだ。
私がネイルサロンで間借りしたいと問い合わせたときも、快くぜひ話を聞こうと言ってくれた。
東京に単身出てきてサロン経営を始めると事情を話せば、ぜひ力になりたいと言って場所を貸し、困ったことがあれば何でも相談してほしいとまで言ってくれたのだ。