激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「出るか」
「あ、はい」
支払いの話がまだ済んでいないのに、香椎さんは席を立ち上がってしまう。
その後に続いて個室を出ていき、カウンターの向こうの店主に見送られ店の入り口をあとにした。
地上に上がる階段を一歩先に上がった香椎さんが、すぐ前で足を止める。
何事かと見上げた先にすっと手を差し出された。
「え……?」
状況が掴めていない私を、香椎さんはわずかに眉根を寄せて見下ろす。そして無言のまま私の手を掴み取った。
「っ!?」
え、え、えっー!?
思わず心の声が口から漏れそうだった。それを喉のすぐそこで押しとどめる。
さっきネイルを見られたときに感じた、少し冷たい手の温度。
その手が私の手を掴み、そして指を交互に絡めて繋がれている。
突然の出来事に動揺する私をよそに、香椎さんは私の手を引いていく。
オレンジ色の淡い光が足元を照らす石造りの階段を、地下からゆっくりと上がっていった。