激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


「出るか」

「あ、はい」


 支払いの話がまだ済んでいないのに、香椎さんは席を立ち上がってしまう。

 その後に続いて個室を出ていき、カウンターの向こうの店主に見送られ店の入り口をあとにした。

 地上に上がる階段を一歩先に上がった香椎さんが、すぐ前で足を止める。

 何事かと見上げた先にすっと手を差し出された。


「え……?」


 状況が掴めていない私を、香椎さんはわずかに眉根を寄せて見下ろす。そして無言のまま私の手を掴み取った。


「っ!?」


 え、え、えっー!?

 思わず心の声が口から漏れそうだった。それを喉のすぐそこで押しとどめる。

 さっきネイルを見られたときに感じた、少し冷たい手の温度。

 その手が私の手を掴み、そして指を交互に絡めて繋がれている。

 突然の出来事に動揺する私をよそに、香椎さんは私の手を引いていく。

 オレンジ色の淡い光が足元を照らす石造りの階段を、地下からゆっくりと上がっていった。

< 85 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop