ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「殿下、コレット様。到着いたしましたのでご準備を」
「ありがとう」


 そんな会話でふと目を覚ましました。私、鼻ちょうちん出てなかった? 大丈夫?


「さあコレット。よく眠れた? ドレスを選びに行こう」
「はい、殿下……」

 殿下だって私の膝枕で居眠りしていたはずなのに、到着前にちゃっかり起きて美しく返事しちゃってんの、なんかズルい。
 お店に入ると、私の寸法から見立てたドレスのサンプルが並べられています。刺繍やレースで飾り付けられた様々なデザイン。これ、あらかじめ殿下が準備させたのかしら。


「コレット、どれが好み? この刺繍が入ったドレスはすごくいいね。君に似合いそうだ」


 傍から見れば、愛する婚約者のために一生懸命ドレスを選ぶ、優しい人に見えるでしょうね。もしかして計算かしら。このお店の人たちも、みんなキラキラした美男子の貴方にくぎ付けですよ。

 ドレスなんて本当にどれでも良かったので、殿下の言った刺繍のドレスに決めてしまいました。刺繍糸は殿下の髪色とそろえて金色に、アクセサリーはエメラルドですって。レオナルド色に染まったいで立ちで夜会に出ることになってしまいます。
 まるで、私がものすごく殿下のことを好きみたいじゃないですか。
 私にとっては、常に殿下のコントロール下に置かれているようが気がして、ただの呪いにしか感じませんけれど。

 無事に呪いのドレスを注文して、次は学園に向かうそうです。私はまだ入学前だけれど、生徒会の皆様を私にご紹介したいのですって。再び馬車に乗り、ブラック労働時間の再開です。


「エリオットも入ってもらったから。生徒会」
「エリオット様も?! でしたら、今からエリオット様にお会いできるのですか?」


 殿下、グッジョブ!
 入学前にエリオット様のお顔を拝めるだなんて、呪いのドレス選びに付き合った甲斐がありました! エリオット様はお元気かしら。視界にも入っていないくらいだから、私のことなんてもうお忘れじゃないかしら。


「おい、仮にも婚約者様の前で喜びすぎだろ。エリオットはお前のことなんか相手にしてないからな。アイツ、馬にしか興味ないし」
「ふふ……エリオット様、相変わらず太陽のような笑顔なのでしょうね。一度でいいから、あの笑顔を正面から見てみたいです……。殿下だって、ヒロインと結ばれるの楽しみにしているのだから、おあいこですよね」


 痛いっ! ちょっと悪魔! 急にほっぺたを引っ張るのやめてください!


「ヒロインと結ばれるのが楽しみなんて、俺がいつそんなこと言ったんだよ」


 え? だって、ヒロインと会うのが楽しみだな~って、いつも呟いているじゃないですか! あら、ちょっと待って。目からのブラックビームが力を増してますわ! 馬車が燃えるー! やめてください!


「俺は、ゲームどおりのイベントが本当に起こるのかを確かめるのが楽しみなんだよ。とりあえず、お前の言う出会いイベント(・・・・・・・)は全員分発生させるからな。ちゃんと協力しろよ」


 ヒロインとの出会いイベント全員発生させる……? 五つのルートを同時並行で楽しむってこと?

 ちょっと待って!
 それってヒロインにとって負担重すぎじゃない? もしかして、初回からハーレムルート選べちゃうの? あと、とりあえずほっぺたから手を離してくださる?


「ということで、全員集めたから」


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