ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 殿下は生徒会室の扉に手をかけました。お値段高そうな、豪華な両開きの扉を開きます。部屋の中央には大きな机。そして、その両側に二人ずつ、制服を来た生徒が座ってこちらを見ています。

 まさか、まさかこの人たちはっ……!

 ジョージ、アラン、マティアス、そしてエリオット様。ヒロインの攻略対象、全員集まってるぅっ!!


「みんな、休みの日にすまない。こちら、私の婚約者のコレット・リード嬢だ」


 攻略対象たちがみんな私を見ています。マティアスとエリオット様は既に知り合いだけれど、ジョージとアランは初対面。
 大混乱しながら殿下の方を見ると、キラキラの中に悪魔の微笑みが見え隠れ。もう、この人一体何がしたいのよーっ!


「初めまして、コレット嬢。殿下からお噂はかねがね」
 立ち上がって礼儀正しくご挨拶してくれたのは、騎士のアラン・ゴールドウィン。黒髪ツンデレの人。

「……よろしく」
 言葉少ないのは、可愛い系貴族のジョージ・ローリング。学園の裏庭で一人で過ごすのがお気に入り。

「コレット……入学おめでとう。来月からよろしくね」
 マティアス・ベルラントは幼馴染のインテリ貴族。ムーンライトフラワーの件で頻繁にやり取りしています。

「コレット! 久しぶりだね。お兄さんは元気?」
 ジェレミーお兄様とも友人、大人の魅力と色気を持つエリオット・スペンサー様。今日も笑顔が素敵です。

 全員の出会いイベントをこなすと宣言したレオナルド殿下は、手っ取り早く全員を生徒会メンバーに集めた模様です。
 それはそうと、わざわざ私をみんなに紹介してくれたと言うことは……


「来月からコレットも生徒会の仲間入りをしてもらうから。書記や会計の仕事、事務作業が色々あるから手が足りないんだ」


 やっぱりー! こき使うためでした!

 殿下は私の方を見て、最上級キラキラの笑顔を振りまきます。いや、私はもうあなたの美しさには騙されませんよ! 単に、私を雑用係としてタダで使いたいって事ですよね?!


「エリオットにも事務方を任せようと思っているから、何かあれば一緒に……」
「誠心誠意務めさせていただきます!!」


 食い気味にお返事しました。よくよく考えれば、生徒会に入ればエリオット様とお近づきになるチャンスができますよね。早くこのブラック王太子殿下から婚約破棄されて、エリオット様のお側にいたいです。


「殿下。先日ご依頼いただいた調査の件ですが、ここにまとめてあります」


 マティアスがブラック殿下に資料を渡します。む? 宿泊先一覧? 殿下はマティアスに何を頼んだのでしょうか。


「ありがとう、マティアス! 私の依頼をこんなに早く仕上げてくれるなんて、本当に君は仕事が早いね」


 殿下の歯が夕日を浴びてキラリと光ります。私以外の人にはこうして褒めて伸ばして、人望を集めているのですね。私はブラック企業の社畜扱いなのに。

 そしてなぜ、殿下は私にこっそりウィンクしてるの?
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