寝取られ妻の憂鬱
二話
〇寝室(朝)

一菜M「な、なんで……まさか私……」
・嫌な予感がよぎり、血の気が引く一菜。

泉「ふぁあ、もう朝?」
・隣で呑気な調子で目を開け、大きく伸びをする泉。

一菜「どうして……ここに」
・声がカタカタと震えている。
・信じられないものを見るように泉を見つめる一菜

一菜M「昨夜、私がした相手って、彼なの!?」
・いたたまれなくなり、弾かれたようにベッドから飛び出す。

泉「……」
・逃げるように部屋を出ていく一菜の背中を見つめ、面白そうにクスッと笑う泉で場面転換

〇リビング

一菜「嘘だ……嘘だ嘘だ」
・息を切らせてリビングへ駆け込む一菜。
・そこには、毛布を被ってソファで眠っている修平の姿がある。

一菜「修平さん……どうして」
・その姿を発見し、さらに顔面蒼白になる。膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪える。

一菜M「どうしよう。もし彼としたことがバレたら」
一菜M「これってやっぱり浮気!?」
・頭を抱え、悶々と自問自答する一菜

泉「おーくさん」
一菜「きゃっ!」
・背後からぽんと肩を叩かれ、ビクッと体を震わせ振り返る一菜。

泉「どうしたの、ぼーっと突っ立って」
一菜「どうしたのじゃないから。そ、それ以上近づかないで!」
・両手で泉を制止するポーズをとる一菜
・だがずかずかと近づいてきて耳元でぼそりと、

泉「よそよそしいなー。昨日はあんなに激しく求めてきたのに」
一菜「……!!!」
・一菜の反応をくすくすとからかうように笑いながら、わざと顔を近づける泉

一菜「間違えたの。まさかあなただったなんて思わなくて……」
・おろおろと視線を泳がせ、完全にパニック状態。
・泉は余裕の表情で、怯える一菜を見下ろしている。

泉「夫と間違えるなんてひどい奥さんですね。普通気づくでしょ」
一菜「そ、それは……」
・図星を突かれ、反論できない一菜

一菜M「たしかにちょっと違うような気はした。匂いも、感触も……」
一菜M「でも、まさか夫じゃないなんて思うはずないじゃない」
・ぐっと悔しそうに唇を噛みしめる。

一菜「どうしてあんなことしたの……」
・涙目になりながら、苦しそうな口調で尋ねる。

泉「さぁ? ムラムラしてたから?」
泉「男なんだから、そういうこともあるでしょ」
・肩をすくめ、悪びれる様子は一切ない一菜
・そんな泉に腹が立ってくる

一菜「だからって……!」
一菜M「信じられない。なんなのこの人。全然悪びれる様子がない」
・ぎりっと奥歯を噛む一菜。
・その怒りすらも、平然と見下ろして楽しんでいる泉。

修平「ん……おはよ、どうした?」
・騒ぎに気づいたのか、ソファからむくっと起き上がる修平。

一菜「あ、お、おはよ。修平さん」
・修平の声にビクッと反応し、慌ててエプロンを手に取りキッチンへ逃げ込む。
・修平と一切目が合わせられず、挙動不審。

泉「ふふっ」
・その滑稽な様子を楽し気に見送る泉。

〇ダイニングテーブル

・朝食の風景。ご飯、味噌汁、焼き魚などが並んでいる。

泉「うわー、味噌汁うま。奥さん料理上手ですよね」
泉「尽くし上手ってやつ?」
・意味深な視線を一菜に送りながら、テーブルの下でこつんと一菜の足を蹴る。

一菜「……っ」
・驚いて顔を上げる一菜。
・泉は口元だけでニヤリと笑っている。完全におちょくられている。

一菜M「なんなのこの子……」
一菜M「どうしてこんな子と、修平さんを間違えちゃったんだろう……」
一菜M「ほんとに私ってば、最低」
・お椀を持った手が震え、ぐっと涙を堪えながら俯く。

〇学校(職員室)

一菜「はぁ……」
・デスクに突っ伏すようにして、深いため息をつく。

一菜M「だめだ、罪悪感で押しつぶされそう」
一菜M「結局あれから、彼はあっさりと帰って行った」

〇回想(マンション・玄関)

泉「じゃあ、先輩、奥さん。お世話になりました」
・意気揚々と頭を下げ靴を履く泉
・修平と一菜が並んで見送る。

修平「またな、泉」
泉「はい。では」
・何事もなかったかのように、元気な様子で家を出て行く泉。

一菜「……」
・ぼんやりと、遠ざかる泉の背中を眺めている。

修平「どうした? 寂しいのか?」
・唐突な修平の言葉。

一菜「ま……まさか!」
・心臓が跳ね上がり、必死に笑顔を作って取り繕う。

一菜「片づけなきゃ」
修平「……」
・そそくさとリビングへ戻る一菜の後ろ姿を、冷たい目でじっと見つめている修平。

〇現在(学校・職員室)

同僚女性「どうしたんですか? 西本先生。朝からため息なんて。悩みごとなら聞きますよ?」
・心配そうに、ひょっこりと顔をのぞき込んでくる同僚

一菜「いえ。なんでも……」
・引きつった愛想笑いを張り付ける。

一菜M「とにかく、もう一度泉くんに会って」
一菜M「修平さんには言わないよう、口止めしなきゃ」

〇放課後(街中)

・車で帰宅中の一菜。

一菜M「よく考えたら、会うっていったってどうやって」
一菜M「名前しか知らないし……連絡先も……」
・ハンドルを握りながら、ぼーっと考え事をして運転している。
・赤信号で停車中、ふと窓の外の歩道に目をやる。

一菜「あ、あれは」
・街中を歩く長身の男、泉を発見する。
・隣には、腕にすがるように歩く派手で可愛い女性がいる。

一菜「泉くん!!」
・助手席側の窓を全開にし、咄嗟に叫ぶ。

一菜「待って! 」
・泉が「ん?」と気づいて立ち止まる。
・一菜は慌ててハザードを点け、路肩に車を停める。

〇街中(歩道)

・走って泉の元へ駆け寄る一菜。

一菜「待って、お願い」
・はぁはぁと肩で息をしている一菜。
・追いつかれた泉と隣の女性はキョトンとしている。

泉「どうしたんですか? あ、もしかして俺とまた……」
・ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべ、からかうように言う泉。

一菜「ちょっとこっちいい!?」
・慌てて泉の腕を掴み、強引に路地裏へ引っ張る一菜。
・残された女性が不満げな視線を送っている

〇ビルの隙間(路地裏)

一菜「あの、昨日のことだけど」
泉「もしかして口止めしにきたんですか?」
一菜「修平さんには絶対に言わないで、お願い」
・泉の言葉にかぶせるように言い、深く頭を下げる一菜。

一菜M「一度の過ちだ。バレなければきっと、元通りの生活に戻れる……」
・頭を下げたまま、祈るようにぎゅっと目を閉じる。

泉「さぁ、どうしようっかなー」
・両手を頭の後ろで組み、もがき苦しむ一菜を心底面白そうに見下ろす。

一菜「お願い……!」
一菜「何でもするから。お金でも、欲しい物があるなら、なんでも買ってあげる!」
・すがるように泉の服の袖を掴む。
・その言葉を聞いて、泉の口角が邪悪に上がる。

泉「いいよ、わかった」
一菜「本当?」
・パッと顔を上げ、安堵の表情を見せる一菜。

泉「何でもするんだよね?」
泉「じゃあ、俺のセフレになるってのはどう?」
・顔を近づけ、シラッととんでもない条件を切り出す。

一菜「は? セ、フレ……?」
・思考が停止し、血の気が引いた唖然とした顔の一菜のアップでEND。
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