White Snow

side 倖智花

定時で仕事を終えた私は、クリスマスツリーを見るために、一人でこの広場にやってきた。

一目見たら帰ろうと思っていたのに、この大きなクリスマスツリーの前から離れることができなくなっていた。
4年前。このツリーの前で彰に告白された。

「来年も一緒に見にこよう」

そう言って、二人で手を繋いで大きなクリスマスツリーを眺めた。
それから、毎年12月になると二人でここに来た。

私たちは喧嘩をすることもあったけれど、その都度仲直りもしたし、互いに大切に思っていた。
もちろん愛し合っていた。
双方の両親に挨拶も済ませて、このまま結婚すると疑いもしなかった。・・・あの日まで・・・。



あの日。
屋外のうだるような暑さとは反対に、寒いほどエアコンがきいた喫茶店の片隅で、彰は頭を下げていた。
彰は眉間に皺をよせ、苦しそうに別れを告げ、何度も謝った。

「好きな人ができた。別れて欲しい」と。

私も知っているその人には付き合っている人がいるらしく、彰の完全な片想いだった。
付き合ってもいないなら別に別れる必要なんてないじゃない?

別れたくなかった私はそう言ったけれど、真面目は彰は首を振った。
「他に好きな子がいるのに智花と付き合うような真似はできない。
俺、智花のこと大好きだから、大切だから、こんな気持ちでこれ以上一緒にいられない。結婚・・・できない」


喫茶店から出ると、蝉が大音量でないていた。






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