子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~
 高所恐怖症なのに、私はリビングから夜景を見るのが好きだった。

 矛盾だらけだよね。

 今だって、別れの悲しさと会えるうれしさが、心で同居してる。

「じゃあ、待ってる」

 

 退社時刻まで、残りあと一時間。

 午後から課長が出かけてしまって退職届が出せずにいる。今日は提出できないかもしれない。

 疾風さんはどこに行ったのか、席を外している。水咲先輩は公認会計士の接客中。私の両脇は空だ。

 ルルルと内線電話が鳴って、秘書課からの呼び出しだった。

 呼び出してきたのが時野さんでないのはせめてもの救いだ。こんな思いもあと少しだからがんばらないと。

 そして秘書課で書類を受け取ると「藤原専務がお呼びよ」と言われた。

「はい」

 廊下に出ると、並ぶ会議室の前に藤原専務が立っているのが見えた。

 専務は私に手招きをする。

 近づくと、会議室から声が聞こえてきた。

「ふざけるなよ」

 疾風さんの声だ。
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