子作り婚の行方。~年上で暴君な後輩と、私の秘密の恋~

 藤原専務が、人差し指を口の前で立てて「よく聞いてごらん」と囁く。

「失礼じゃないですか。縁談はあなたのお父さまから」

 時野さんの声?

「君の父親から契約を盾にして言ってきたの間違いだろ」

「でも!」

「君が円花に何をしたかわかっている。ついさっき証言が取れた」

「いったい、なんの話かしら」

「円花の隣に座った男が、君に頼まれて桃井のグラスに睡眠薬を入れたと正直に話した。ここに証言の録音データがある」

 時野さんの返事はない。

「彼は君に怒っているよ。お礼に〝今回は〟本社に配属の約束だったのに話が違うし、おまけに彼は会社をクビになるそうだ。間もなくな」

「クビ?」

「君にもらった薬で、社内の女性に同じことをしようとしたらしい。自業自得だが、開きなっているから、なんでもしゃべる」

 疾風さん……。
 調べてくれていたのね。

 でも、いけない。時野さんのお父さまが黙っていないわ。

「時野さんを怒らせちゃだめ」

 呟きながら扉に手をかけようとすると藤原専務に止められた。

「彼は時野グループよりも、何倍も大きな契約を取りつけてきましたよ」

「そう、なんですか?」

「この短期間にね。たいしたものだ」

 と、そのとき。

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