俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 真面目、という言葉は前の職場でもたくさん言われた。でも、すべてどこか揶揄するようなニュアンスで……決して褒められているわけじゃなかった。

(でも、今のは違う。ちゃんと私を認めてくれる言葉だ)

 同じ言葉でも込められた気持ちで、まったく違って響く。それを日菜子は初めて知った。そっと彼の顔を盗み見る。

(いい人なんだよね。頼りがいがあって、部下思いで――)

 思えば、日菜子が職場になじめるきっかけを作ってくれたのも彼だった。

「まだかかるのか?」
「いえ、もう切りあげようと思っていたところです」
「じゃ、飲みにでも行くか?」
「えぇ?」

 思いきり顔がこわばってしまった。

(仕事ぶりは尊敬しかない。それにめったにいないイケメンなのも認める。そんな人にこんなこと思うなんて、何さま?なのも、わかってる。けど――)

「あ、その」

 善の瞳がいたずらっぽく光る。

「氷堂って本当に俺のこと嫌いだよな。なんで? 俺、なにかしたか?」

 彼は腰を折って、日菜子に顔を近づける。大人の色香があふれるその顔面が苦手なわけでは決してない。むしろ、好みのタイプだ。

「き、嫌いなわけではないです。ただ、なんというか、本能というか、生理的にというか」

 善は目を丸くしたかと思うと、ぷはっと盛大に噴き出した。
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