俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 画面を見つめる日菜子の目尻がさがる。職場にも仕事にも慣れ、同僚とのランチも特別なものではなくなった。
 南に宣言したとおり、恋愛は気配もないけれど、同僚との関係は以前の職場とは比べものにならないくらい良好だ。

 静かなフロアに誰かの足音が響いた。日菜子が入口に視線を向けると、そこにいたのは善だった。

「明かりがついてるからのぞいてみたら……まだ残ってたのか?」

 社長室はこのひとつ上の階だ。が、彼が社長室にこもっていることはほとんどなく、業務時間中は各フロアにもよく顔を出していた。
 日菜子のほうに近づいてきた彼は作業中の図面をのぞく。

「そんな急ぎなのか? どのお客さまのものだ?」

「小城さまです。次の打ち合わせは来週なので急ぎではないですが、早めに図面をあげたほうが営業さんも準備を進めやすいかと思いまして」

 日菜子の言葉に善は軽く目を細める。

「ほんと真面目だな。でもまぁ、その気遣いは営業部が喜ぶな。顧客にどうプレゼンするのか、作戦を練る時間は大事だから」
 
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