俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 日菜子がそんなふうに考えはじめたことを察したのだろうか。
 勢いだけの口約束……を彼はあっという間に既成事実にしてしまう。翌週には日菜子の実家にあいさつに来て――もちろん両親は小躍りする勢いで喜んだ。

 そして、お見合いからひと月も経っていない今日、十一月最初の土曜日。

 日菜子は恵比寿にある善のマンションに引っ越してきた。

 落ち着いた雰囲気でセンスのいい低層マンションだ。都心とは思えない広々とした中庭は季節の花々で彩られている。

「いらっしゃい」

 エントランスで出迎えてくれた善は、ネイビーのニットにブラウンのパンツというラフなファッションに身を包んでいた。初めて見る私服姿に、彼とプライベートな時間をともにするのだという実感が湧いてくる。

(き、緊張してきた。本当に私……この男性(ひと)と暮らすの?)

「短い間ではありますが、本日よりお世話になります」

 深々と頭をさげると、彼は噴き出すように笑う。さりげなく肩を寄せ、日菜子の荷物を取った。

「短い間で終わるかどうかは、まだわからないけどな」
「あっ、自分の荷物くらいは自分で――」
「同居初日くらいかっこつけさせてくれ」

 善は荷物を持っていないほうの手で日菜子の手を引き、歩き出す。自然なエスコートすぎて断る隙もない。

(モテる人ってこういう感じなのか)
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