俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「でも、私たちは契約で、夫婦といっても」

 動揺で日菜子の言葉はしどろもどろだ。善はククッと愉快そうにおなかを抱える。

「冗談だ。日菜子の部屋は手前のここ。ゲストルームだけど、生活に必要なものはそろってるから」

 その台詞に全身から力が抜けていく。

(冗談にしても質が悪すぎるわ)

 日菜子は彼を軽くにらみながら言う。

「からかったんですか?」

 怒っているつもりなのだけれど、彼のほうは悪びれる様子もない。

「いや、俺としてはまんざらでもないんだけど……生理的に無理だという女をどうこうするほど悪趣味にはなれないからな」

 言って、ほんの少し寂しそうな顔をする。

(あっ……)

「お前の言うとおり、利害関係の一致による契約婚だしな。そういうことまでは求めないから心配するな。そろそろ湯が沸いたかな。お茶にしよう」

 リビングに向かって歩き出した彼の背中に日菜子は声をかける。

「あのっ」
「ん?」

 軽く振り向いた彼に、一生懸命言葉を紡ぐ。
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