俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「そうそう。今日のネクタイ、どっちがいいと思う?」
彼は二本のタイを手にしていた。深みのあるオレンジ色のものと艶のあるシルバー地にさりげない模様の入ったもの。スーツはシンプルなチャコールグレーなので、どちらでも問題なく合いそうだ。
「どちらも、よくお似合いだと思いますよ」
顔もスタイルも抜群の彼なら多少癖のあるファッションも問題なく着こなせてしまうだろうし、そもそもファッションセンスも日菜子よりずっといい。なぜ自分の意見など求めるのだろう。その疑問が顔に出ていたのかもしれない。
善はニヤリと笑んで言う。
「日菜子に選んでほしいんだよ。どっちが好きだ?」
「えっ……と」
日菜子は戸惑いながらもオレンジ色のほうを指さす。
「こっち? オレンジが好きなのか?」
彼の言葉に小さく首を横に振る。
「私が好きなわけではなく、善さんに似合うと思うから。初めて会ったとき、太陽みたいな人だなと思ったので」
そう言うと、彼はものすごくうれしそうな顔になる。
「そうか。じゃあ今日はこっちにしよう。日菜子がつけてくれるか?」
「えぇ?」
差し出されたタイを思わず押しのけてしまった。すると彼は拗ねたような顔でぼやく。
「奥さんにネクタイをつけてもらうの新婚っぽくて憧れたのに。このくらいの頼み、聞いてくれてもよくないか」
「だ、だって! 奥さんといっても私は……」