俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
(自分で決めたことだ。普通の結婚とは違うけれど……)

「そっかぁ。じゃあ善を好きになったのね」

 南がそう思うのは自然なことだろう。日菜子はイエスともノーとも言えなかった。善への感情は自分でもよくわからない。戸惑いから言葉を詰まらせたのを、南は照れと解釈したようだ。

「びっくりしたけど、絵になるふたりでお似合いよ! 幸せになってね」

 弾んだ声で祝福してくれた。

「ありがとうございます」

(嘘はついてないけど……やっぱりちょっと心が痛む)

 その夜の夕食は日菜子が作った。煮込みハンバーグと野菜スープに常備菜をいくつか添えた。

『契約夫婦なんだし、家事は各自でやれば十分だよ』

 善はそんなふうに言ったが、ひとりぶんもふたりぶんも大差ないからと作らせてもらった。

(ある程度の量があるほうが作りやすいっていうのも嘘じゃないけど……少しでもお返しになれば)

 こんな自分にも親切にしてくれる彼に、恩返しをしたいという気持ちはずっとあった。職場になじめたのも彼のおかげなのだ。

(料理は結構自信があるし、喜んでくれるといいんだけど)
< 56 / 123 >

この作品をシェア

pagetop