合意的不倫関係のススメ
そう思い立ってからの私は実に行動的だった。SNSを駆使すれば、大抵の人間と繋がれる。体を売ることを生業としている女性数人にコンタクトを取り、その中から完全に金銭で繋がった関係だと割り切れそうな性分の女を見極めた。
「あなた奥さんでしょ?こんなこと頼んでくるなんてイカれてるね」
「どう思われようと構わないわ」
「まぁ私は、お金さえ貰えればなんでもいいんだけど」
家から離れた喫茶店で落ち合い、念書を書かせる。化粧前の素顔が想像できないような見た目と、派手な服装。彼女が履いているバイオレットのミュールが視界に入り、その不快感に思わず奥歯を噛み締めた。
「では、明日。手筈通りに」
「奥さんさ。よっぽど、旦那のこと愛してるんだ。頭イカれちゃう位、好きで好きでどうしようもないってことでしょ?」
「…そう、ですね。私は彼を、愛してるから。だから捨てられない為なら、なんだってする」
色のない瞳で、正面を見つめる。彼女は一瞬身震いをして、それを誤魔化すようにアイスラテに手を伸ばした。
彼女と別れたその足で、私は家電量販店に向かう。防犯用として売られている小型カメラを購入し、蒼が帰ってくる前に寝室に仕込んだ。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
何食わぬ顔をしてキッチンに立ち、温かな食事を用意して彼を迎える。後ろでに隠した手は、小刻みに震えていた。
何も変わらない、普段通りの日常。あれだけ頻繁に鳴っていた私の携帯がぴたりと止んだことに、彼は何も言わなかった。
それぞれ入浴を済ませ、ベッドに入る。蒼はまた、私の首元に顔を埋めた。
「ねぇ茜」
「なぁに?」
「俺のこと、愛してる?」
背中に回された彼の手は、冷たい。私は瞼を閉じ、今日一日自分がしてきた行動を反芻した。
「愛してる。私には、蒼しかいないわ」
「…そっか。うん」
まるで安堵したかのような溜息の後、しばらくして小さな寝息が聞こえてくる。
(今日も抱かれなかった)
大丈夫。きっと、大丈夫。これが上手くいけばまた、蒼は私を愛してくれる。
それが罪悪感だろうとなんだろうと構わない。誰に理解されなくても関係ない。壊れているというなら、私達は出会う前からとっくに普通ではないのだから。
「蒼、好きよ。愛してる…」
彼と同じように、免罪符を口にしながら。起こしてしまわぬよう、静かに涙を流した。
「あなた奥さんでしょ?こんなこと頼んでくるなんてイカれてるね」
「どう思われようと構わないわ」
「まぁ私は、お金さえ貰えればなんでもいいんだけど」
家から離れた喫茶店で落ち合い、念書を書かせる。化粧前の素顔が想像できないような見た目と、派手な服装。彼女が履いているバイオレットのミュールが視界に入り、その不快感に思わず奥歯を噛み締めた。
「では、明日。手筈通りに」
「奥さんさ。よっぽど、旦那のこと愛してるんだ。頭イカれちゃう位、好きで好きでどうしようもないってことでしょ?」
「…そう、ですね。私は彼を、愛してるから。だから捨てられない為なら、なんだってする」
色のない瞳で、正面を見つめる。彼女は一瞬身震いをして、それを誤魔化すようにアイスラテに手を伸ばした。
彼女と別れたその足で、私は家電量販店に向かう。防犯用として売られている小型カメラを購入し、蒼が帰ってくる前に寝室に仕込んだ。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
何食わぬ顔をしてキッチンに立ち、温かな食事を用意して彼を迎える。後ろでに隠した手は、小刻みに震えていた。
何も変わらない、普段通りの日常。あれだけ頻繁に鳴っていた私の携帯がぴたりと止んだことに、彼は何も言わなかった。
それぞれ入浴を済ませ、ベッドに入る。蒼はまた、私の首元に顔を埋めた。
「ねぇ茜」
「なぁに?」
「俺のこと、愛してる?」
背中に回された彼の手は、冷たい。私は瞼を閉じ、今日一日自分がしてきた行動を反芻した。
「愛してる。私には、蒼しかいないわ」
「…そっか。うん」
まるで安堵したかのような溜息の後、しばらくして小さな寝息が聞こえてくる。
(今日も抱かれなかった)
大丈夫。きっと、大丈夫。これが上手くいけばまた、蒼は私を愛してくれる。
それが罪悪感だろうとなんだろうと構わない。誰に理解されなくても関係ない。壊れているというなら、私達は出会う前からとっくに普通ではないのだから。
「蒼、好きよ。愛してる…」
彼と同じように、免罪符を口にしながら。起こしてしまわぬよう、静かに涙を流した。