魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
思案顔で顎を摩るのを見て、私は不安な思いで空を仰いだ。
すると、厚い雲間を縫って、また別の他社機が姿を現した。


やや風が弱まったタイミングに恵まれ、フラフラと揺れながらも、なんとか片足を接地させた。
すぐにもう片方も着いて着地成功して、滑走路を走っていく。


私も佐伯さんも、ほとんど条件反射で手を叩き――。
なんとなく、顔を見合わせる。
彼が先に、ふっと表情を和らげた。


「ああやって、まったくチャンスなしってわけじゃない。うちの飛行機も、パイロットがタイミングを測って、無事にランディングさせてくれるよ」


まっすぐ空を見据えて、そう呟く。
その横顔はまだどこか険しく、私にと言うより、自分に言い聞かせているようだ。


なんとかしたい……でも、地上にいる私たちにできることはない。
飛行機が地面に降りるまでは、パイロットを信じて待つしかない。


「そう……ですよね」


私は、頷いて応えた。
無意識に、両手の指を組み合わせる。


どうか、どの飛行機も無事に地上に帰ってきますように……。
固く目を瞑ると、網膜に焼きついている神凪さんの姿が、目蓋の裏に浮かび上がった。


『任せとけ』


ちょっと不遜に眉尻を上げた強気なドヤ顔が、今はなによりも頼もしい。
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