魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
気にした途端ソワソワと落ち着かなくなって、私は滑走路を見遣った。
すると、まさにゴーアラウンドした他社機を目にして、きゅっと唇を結ぶ。


整備の合間に、パリ便のフライトプランを確認できた。
シートは満席。
貨物搭載量もMAXのため、予備燃料は少ない。
羽田上空で長いこと旋回待機する余裕はないはずだ。
長距離便だし、管制も優先着陸させると思うけど――。


ドキドキと騒ぐ胸から意識を逸らそうと、私は肩を動かして息を吐いた。
気を取り直し、今目の前にある機体の点検を進めようとすると。


「椎名!」


別の機体に回っていた佐伯さんが、私の方に走ってきた。


「はい」

「パリ便、着陸許可下りたぞ! 俺たちでチェックするから、一緒に来い!」

「っ、え!?」


声をひっくり返らせる私に構わず、颯爽と駆けていく。
私は急いでツールをボックスに戻し、彼の後についた。


この二時間で雨はやや弱まったけど、相変わらず風が強い。
ハンガーの中にまで吹きつける風に、何度か足を止めながら外に出た。


ヘルメットに、雨粒がパチパチと打ちつける。
目の上に手を翳して、どんよりした空に飛行機を探した。
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