魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「雲、まだ厚いな。コックピットからの視程も相当悪いはず」
独り言みたいな呟きが振ってきて、私は彼に視線を動かした。
「でも、大丈夫……ですよね?」
縋る思いで訊ねる私に、佐伯さんが目を落とす。
そして、
「うん」
力強く首を縦に振って応えてくれた。
「って言うか、お前の彼氏だろ。信じてやれよ」
「っ……!」
「ま、久遠さんが操縦桿握ってるだろうけど」
和ませようとしてか、ちょっぴりおどけた口調でうそぶく。
そのおかげで、私の肩からも力が抜けた。
「そうですよね」
目尻を下げて同意してから、再び空に目を凝らす。
大丈夫、大丈夫、大丈夫――。
拝むように両手を組み合わせ、ぎゅっと目を閉じた。
神凪さん、『任せとけ』って言ったもの。
初めて会った時、自分のことを航空整備士だなんて偽った人だけど、私に嘘をついたことはない。
私に、自分を好きにさせたい理由も。
今野さんが好きだったことも。
私には理解が難しい思いだと承知で、言葉を選び、一生懸命伝えてくれた人だから――。
「椎名、あれだ。来るぞっ」
鋭い声にハッとして、バチッと目を開けた。