魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
神凪さんがムッと拗ねた顔をして、私の頭に腕を回した。


「……コイツ、俺のって」


自分の胸に私の顔を押さえつけ、頭に顎を置いてボソッと呟く。
ホッとしたような、満ち足りたような。
そんな口調に、私の胸がドキンと跳ねた。


言い方はアレだけど……。
確かに、いつ寝落ちたのか覚えていない。
私も神凪さんも裸のまま。
この一晩で、彼の体温をすっかり覚えてしまうほど重なって繋がったのは事実で、こうして抱き寄せられると、肌に馴染んだ温もりが頬から浸透してくる。


私はこくりと喉を鳴らし、思い切って彼の背中に腕を回した。
それに気付いた神凪さんが、私をぎゅうっと抱きしめ返してくれる。
それがとても幸せで――。


「……神凪さんも」

「ん?」

「神凪さんも、私の、ですよね?」


彼の引き締まった胸に顔を埋めたまま、くぐもった声で訊ねる。
すると、神凪さんは黙り込んだ。
『当たり前だろ』という力強い即答を待ってたわけじゃないけど、悩んだり考え込まれるとは思わなかった。


「神凪さん?」


私は不安になって、彼の反応を窺おうと顔を上げ――。


「……え」


面食らったような……まったく想定の範疇になかったポカンとした表情を見とめて、怖気づく。
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