魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
神凪さんは、私の視線に気付くと。


「お前昨夜、俺のこと名前で呼んだじゃないか」

「は?」

「あれ、『私の男』って宣言だろうと思ってたけど。……違ったの?」

「……!」


ボヤくような指摘で、私の記憶が一気に蘇った。
怪訝そうに首を捻る彼から両手で顔を隠し、くるっと背を向けて逃げる。


「おい?」


不審げな呼びかけに、ひたすら小さく身体を縮め……。


「違う。あれは……無自覚に張り合った、っていうか」

「なにに」

「……今野さんに」


不可解そうな気配を背中にビンビン感じながら、歯切れ悪く答える。


「は? なんで」

「なんでって!」


解し難い、といった口調にムキになって、私は条件反射で上体を起こした。
答えを待つ上目遣いの視線を受け、ゴクッと唾を飲んで――。


「……神凪さんが、本当に好きな人だから」

「本当に?」

「手に入らなかったら……って考えたら、怖くて言えないほど好きな人……」


目を逸らしながら白状して、語尾を尻すぼみにすると、短い吐息が返ってきた。


「あのなあ……」


神凪さんが苦々しそうに呟く。
そして、反射的に竦んだ私の太腿に、我が物顔で頭をのせてきた。
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