魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
それを聞いて、私はグッと言葉に詰まった。
冷水を浴びたような気分で固まる私に、神凪さんがやけに艶っぽく口角を上げる。


「お前の卑屈なまでの自己否定的精神。同じ整備士で敬愛する佐伯先輩ですら、恋人には地上じゃなく空のCAを選んだからか」


反応したら、肯定したことになる。
なのに私の脳裏には、彼が言う『空のCA』の顔がはっきりと浮かび上がってしまった。
佐伯さんの彼女、今野(こんの)(ひとみ)さん。
とても綺麗でカッコいい、私とは正反対で華やかなCAさん――。


そのせいで、不覚にも肩がピクッと動いてしまった。
私を下からジッと見据えていた彼は、そんな些細な反応も見逃さない。
それでもまだ飽き足りないかのように、まったく視線を外さないから、心の奥底まで暴かれる気分になる。


悔しさと途方もない敗北感で膝が震え、私はその場にストンと座り込んでしまった。
唇を噛み、床に置いた手をギュッと握りしめ、戦慄かせる。


ふと、私に一層濃い影が落ちた。
神凪さんがベッドに腰かけた体勢のまま、身を屈めて私を見下ろしている。


「お前、誰かに薄汚いなんて言われたの?」

「え?」


つい一瞬前より低く落ち着いた口調だったけど、私はギクッとして肩を力ませた。
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