魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
社会人になって二週間ほどして、大手銀行系システム会社に入社した彼の職場近くで、初めて仕事帰りに会う約束をした。
彼は待ち合わせ場所に先に来ていて、遠目にもスーツ姿がそれなりに様になっていた。
リクルートスーツとも違い、ちょっと印象が変わった彼に、私はちょっぴり緊張しながら近寄り……。


『なんかお前、臭うよ。薄汚いし』


開口一番、眉をひそめて鼻を手で押さえられてしまい、怯んだ。
確かに、一日中ハンガーで仕事をした後で埃っぽかったけど、もちろん、ちゃんとシャワーを浴びてから来た。
服装はあまり大学時代と変わらず、オフィス街にはカジュアルすぎて、失敗した自覚はあるけど、臭う、薄汚いって――。


彼はあからさまに私と距離を置いて歩き、適当に居酒屋に入った。
店内は彼と同じくスーツ姿の男女や、可愛い綺麗な服装の女性グループばかりだった。
彼は私と目を合わせずにソワソワと辺りを見回すばかりで、一向に会話は弾まず一時間ほどでお開きになった。
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