魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「ごめん。ちょっと意外だった。あ、でも、目出度い。そっかそっか、おめでとう!」


最後ははにかんで笑って、私たちの方に戻ってくる。


「ありがとう、佐伯」


神凪さんが、絶句してなにも言えない私の前に出て、涼しい顔でお礼を言った。


「悪い。コイツ、恥ずかしがって礼も言えないみたいで」


背中に回した私がわなわなと唇を震わせるのを肩越しに見下ろし、親指で指し示しながら肩を竦める。


「はは。まあ、照れ臭いよな」


佐伯さんは彼に同意してぎこちなく笑った。
そして。


「おい、神凪。俺の可愛い後輩だぞ。大事にしろよ?」


神凪さんを肘でトンと突いて、彼の向こうから顔を覗かせてくる。
意図せず視線がぶつかり、ドキッと胸を跳ね上げた私に、


「椎名、なにかあったら俺に言えよな。同期として、懲らしめてやるから」


ニッと目を細めた。


「っ……」


喉に声が詰まり、私は唇を噛んだ。


「? 椎名?」

「佐伯、さっさと行け。ディスパッチャー、待たせてるんだろ」


神凪さんがサッと横に出て、再び私と彼の間を遮った。
広い背中の向こうから、「ああ」と相槌を打つ声がする。
< 50 / 222 >

この作品をシェア

pagetop