魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
佐伯さんはちょっと不思議そうに首を捻ったものの、私に手を振ってくれた。
私たちを追い越し、マネージメントセンターの正面玄関に進んでいく。
作業着の広い背を見送って、私はドッと降りてきた安堵感に胸を撫で下ろした。
ところが。
「ああ、そうだ。佐伯」
神凪さんがニヤリと笑って、一歩前に出た。
「え?」
「話しておきたいことがある」
立ち止まって振り返る佐伯さんに、なにを言うつもりか――。
安堵したのも束の間、警戒心を呼び起こすのが遅れた。
「ちょっ、神凪さ……」
それでもなんとか声を発し、神凪さんが佐伯さんに喋ろうとするのを阻もうとした私は、
「俺、椎名と付き合ってるんだ」
凛と張った低い声に遮られ、自分の耳を疑った。
鼓膜が捉えたのが、私が予想していた言葉と違ったからだろうか。
理解が追いつかず、呆気に取られてしまった。
「……え?」
佐伯さんが、たっぷり一拍分間を置いて聞き返した。
目を瞠ってポカンとする彼に、神凪さんが優雅に微笑む。
「お前と今野の時も報告もらったからさ。こっちも一応」
「え。ああ、いや、ご丁寧にどうも……」
佐伯さんは、驚きと動揺で感情が忙しい様子で目を泳がせ、ポリッとこめかみを掻いた。
私たちを追い越し、マネージメントセンターの正面玄関に進んでいく。
作業着の広い背を見送って、私はドッと降りてきた安堵感に胸を撫で下ろした。
ところが。
「ああ、そうだ。佐伯」
神凪さんがニヤリと笑って、一歩前に出た。
「え?」
「話しておきたいことがある」
立ち止まって振り返る佐伯さんに、なにを言うつもりか――。
安堵したのも束の間、警戒心を呼び起こすのが遅れた。
「ちょっ、神凪さ……」
それでもなんとか声を発し、神凪さんが佐伯さんに喋ろうとするのを阻もうとした私は、
「俺、椎名と付き合ってるんだ」
凛と張った低い声に遮られ、自分の耳を疑った。
鼓膜が捉えたのが、私が予想していた言葉と違ったからだろうか。
理解が追いつかず、呆気に取られてしまった。
「……え?」
佐伯さんが、たっぷり一拍分間を置いて聞き返した。
目を瞠ってポカンとする彼に、神凪さんが優雅に微笑む。
「お前と今野の時も報告もらったからさ。こっちも一応」
「え。ああ、いや、ご丁寧にどうも……」
佐伯さんは、驚きと動揺で感情が忙しい様子で目を泳がせ、ポリッとこめかみを掻いた。