魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
大きく肩で息をしてから、思い切って目線を上げる。
その途端、ムッと唇を結ぶ神凪さんとバチッと目が合い、今度はギクッとして心拍が上がった。


「あ、あの……」


とっさになにを言おうとしたかは、自分でもわからない。
だけど彼は、ふいと目を逸らした。
そして。


「別に、振り回そうなんて思ってないけど。そんなに心配なら、お前が彼女にしてやればいいだろ」

「は?」

「その方が、椎名も喜ぶ」

「っ、神凪さんっ!」


通り過ぎ際に佐伯さんに告げた一言にギョッとして、私は詰るような声をあげた。
神凪さんは顔を背けて、コックピットから出ていってしまったけれど――。
なんてこと……なんてこと言ってくれたの……!!


「あ、あの、佐伯さん。神凪さんが変なことを言ってすみません!」

「え? ああ、いや。こっちこそごめん。二人のことなのに……余計な口出しだったな」


ダラダラと変な汗を掻きながら必死に謝る私に、佐伯さんもきまり悪そうにポリッとこめかみを掻く。


「いえ、どうか本当に気にしないでください」


私は急いで首を横に振って答え、


「えっと……急いで飛行機運ばなきゃですね。トーイングカー、準備します」


彼の横を摺り抜けて出入口に進み、横付けされたパッセンジャーステップを駆け下りた。
< 65 / 222 >

この作品をシェア

pagetop