魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「からかうのやめてください。遊びたいだけなら他に……」

「ああ、そう来る。おーい、佐伯……」

「ちょっ!」


わざわざ口元に手を立てて声を張る彼に慌てて、私は一歩詰め寄ってしまった。
すると。


「なんだよ、呼んだか?」


開け放ったドアの向こうから声が聞こえて、ハッとして目を向ける。
佐伯さんが機内に上がってきていた。
私と神凪さんに交互に視線を走らせるのを見て、弾かれたように飛び退いた。
そんな私に、彼はほんのちょっと苦笑して――。


「交際報告受けたとはいえ、コックピットでイチャつかれるとなあ……」

「ちっ、違……!」


冗談めかして顔をしかめる彼に否定しようとした私を、神凪さんがふんと鼻を鳴らして阻む。


「羨ましいか?」

「バカ言え。……っつーかお前、あんまり椎名を振り回すなよ」

「振り回す? 俺が?」


まったく自覚なく、心外といった顔つきをする彼に、佐伯さんは唇をへの字に曲げた。
ヘルメットを外し、乱れた短い髪をさらにグシャグシャと掻き回すと。


「その……今までの彼女と同じ感覚でいられると、椎名がついていけないんじゃって、心配でさ」


遠慮がちに心配されて、私の心臓がドキッと跳ねる。
気にかけてもらえたのが嬉しくて、鼓動を加速させる自分を戒めるつもりで、胸に手を置いてギュッと握りしめた。
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