魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
いいから聞けよ
神凪さんが乗った飛行機は、福岡空港を往復して、午後八時に東京に戻る予定だ。
復路も彼が操縦桿を握るかはわからないけど、私は飛行機の帰航を待ってみることにした。


空港ターミナル内にある勤務者専用ラウンジで、駐機スポットに面した窓際の席に座り、アイスコーヒーを飲みながら滑走路を眺めた。
夕暮れ時を迎え、滑走路に等間隔に走る白いランプが映える。
夜が更けるにつれて、ランディングした飛行機がどこの会社のどの機種か、判別できなくなっていく。
午後七時を過ぎると、滑走路も駐機スポットもすっかり闇に包まれた。


私は、左手首に嵌めた腕時計に目を落とした。
午後七時五十分。
今日の便に目立ったディレイはないから、もう間もなく福岡空港からの787がランディングするはず――。


それから程なくして、日本エア航空のスリーレターコード、『JAK』のロゴが塗装された機体を目視できた。
マーシャラーの旗の誘導に従い、こちらに向かってゆっくり悠然と進んでくる。


日本エア航空は、ボーイング以外に、エアバスの中型機を所有している。
エアバスシリーズの飛行機の顔は、くちばしがプクッとしたイルカに喩えられるけど、この機体はそうじゃない。
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