魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「ああ、俺のせい。責任取るから、俺に話せよ。なんでも聞いてやるから」


神凪さんが焦れた様子で声を荒らげて、彼女の腕を取って自分の胸に抱き寄せた。
そうされた今野さんじゃなく、見ていた私の方が、息が止まるかと思った。
ひゅっと音を立てて息をのんだのを最後、そのまま呼吸を忘れる。


ドッドッと早鐘のような音を立てる心臓が怖くて、彼らにくるっと背を向けた。
胸元の服を掻き毟るように掴んで、その場にしゃがみ込む。


「ちょっ……なにしてるのよ」


今野さんは戸惑いを隠せない声で、彼を詰った。


「誰かに見られて、変な噂立てられたら困るでしょ」


彼女のヒールがアスファルトを打ち、カツッと硬い音を立てる。


「瞳」

「ほら、早く行こう。デブリーフィング遅れたら、久遠機長の金棒、頭から落とされるわよ」


空気を変えようとしてか、今野さんは不自然なほど声を弾ませた。


「……はいはい」


神凪さんも、溜め息で応じる。
彼女のものとは違う、コツコツという足音が続き――。


「あ」


短い声が耳に入り、私はそっと顔を上げた。
そして。


「っ!」


彼女を追って正面玄関に入っていこうとしていた神凪さんとバチッと目が合い、焦って立ち上がる。
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