病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

プロローグ

 大聖堂の、祭壇の前。薔薇窓から差し込む光が女神の像を照らす。
 金銀で荘厳された、慈悲のほほえみがわたしたちの門出を祝福している。

(なんじ)、ユード・フォン・オーベルシュトルフ、病める時も健やかなる時も、生涯変わらぬ愛を誓うや?」
「はい。誓います」

 隣に立つ人の、低いはっきりした声が聞こえる。司祭様がついでわたしに問いかける。

「汝、セシリア・フォン・ブロムベルク。病める時も健やかなる時も、生涯変わらぬ愛を誓うや?」
「はい。誓います――」

 そう、誓った瞬間、わたしの脳裏に別の誰かの声が甦る。

『ユードはあなたのことなんて、愛していないわ。可哀想なセシリア。彼が愛していたのは、わたくしだもの。わたくしたちは愛し合っていた。ずっと以前から』
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