病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

22、裏切りの真相

「ちょっと待って……何度も、繰り返しているの? ……その、同じ二十年を?」
 
 明るい陽射しの下での衝撃的な告白に、わたしの声が震える。指先から冷たくなり、膝がガクガクして立っていられず、わたしはユードに縋りついていた。

「そんな……つまりわたしは、あなたに何度も裏切られてるの?」
「なんでそうなる! 裏切ったのは……その……前回だけ」
「……やっぱり裏切ったのね……」
「それを、今から説明しようと……」

 ユードはわたしを抱きしめたまま、しばらく考えるように空を仰いでいたが、わたしの腰に手を回して支え、城の奥へと歩き出した。すべて燃え落ちて石積みの基部だけになった城のアーチをくぐれば、裏手は庭園の跡地らしかった。

 すっかり雑草が生い茂り、大理石の像は苔むし、倒れて首が折れて転がっていた。

 ユードは天井が抜けた円形の東屋(ガゼボ)にわたしを連れて行った。崖の上に立つ城からは、深緑の森に囲まれた濃紺の湖が眺められ、陽光に湖水のさざ波が煌めく。

 大理石のベンチにユードがハンカチを敷き、わたしに座るように言った。

「ありがとう……」
  
 礼を言って大人しく腰を下ろせば、その隣にユードも座る。
 
「落ち着いた?」
「……まだ、無理よ。……よくわからない。混乱して」
「当然だ。でも、貴女には前回の記憶があるから、まだ理解は早いはず」
    
 ユードが湖を見下ろしながら言う、その整った横顔をわたしは見つめ、覚悟を決めて尋ねた。

「前回、あなたはディートリンデ様と、その……彼女と結婚するためにわたしを利用して、お父さまの冤罪を訴え出て殺した。そうでしょう?」
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