病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士
 ユードがわたしの方を向き、凛々しい眉を顰める。

「半分、正しいが、半分は間違いだ。……最初から話せば……何度か時戻りを繰り返して、俺は聖杯が帝都のオーベルシュトルフ侯爵の手にあるのを知った。だから聖杯に近づくために、オーベルシュトルフ侯爵家の騎士になった。俺は――」

 ユードが少し言い淀み、覚悟を決めたようにため息交じりに告げた。

「聖杯の騎士としての目的を達するために、いくつか特殊な力があって……貴女も以前に言ったけれど、異常に女に好かれるようにできている」   
「……好かれる……」
「言うなれば、魅了の力というか……説明しにくいけれど、女を誑かして言うことを聞かせる力というか……」
「意識的に使っているの?」
「意識的に使うこともある。この力のおかげで、命を拾ったことも何度もある」
    
 ユードが乱れた前髪をかき上げ、わたしを見て言った。

「俺は前回……というかその前もだけれど、この力を使ってディートリンデに近づいた。俺が利用しようとしていたのは、貴女ではなくて、ディートリンデだ」
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