病める時も健やかなる時も、その溺愛はまやかし~死に戻りの花嫁と聖杯の騎士

23、繰り返す時(ユード視点)

「もう……ころして……おねがい、ころして……」

 ようやく見つけ出した時には、セシリアの心は完全に壊れていた。晴れた空のような薄い水色の瞳は虚ろで、もう、俺が誰かもわからなくなっていた。
 セシリアを凌辱した男たちは俺が全員殺した。この事態を引き起こしたディートリンデは皇帝の親衛隊に拘束されて、遠からず処刑されるだろう。侯爵も死に、聖杯は取り戻した。――ようやく。

 だが、幾度も繰り返した時戻りのループを抜け、俺が歩みたかった未来はセシリアとのものだ。 
 セシリアのいない未来が続くなんて、俺は耐えられない。だから――
 
 ようやく取り戻した聖杯を、俺はこの手で地下牢の床に叩きつけ、粉々に叩き割った。
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